相棒を迎える効果

 どんな犬種にも言えることですが、湿疹が出たり、赤みが取れない、犬がかゆがるといった症状に悩む飼育者は、秋田犬の場合も少なくありません。そうした悩みを抱える方々の大半は、秋田犬飼育の熟練者ではなく、家族の一員として秋田犬と生活をともにしてきた、いわゆる素人さんです。獣医の治療を受けたり、ドッグフードを高級なものに替えたり、中には獣医が奨めるドッグフードを試用しているといった方も多いのですが、それでも改善されず、「何かいい方法はないでしょうか」と当クラブに相談なさる方も結構おります。

 皮膚に異常が表れるのは、疾病による場合、餌の与え方に根本的な誤りがある場合、そして過度にストレスを溜め込んでしまっている場合などが原因として考えられます。このコーナーでは、ストレスによる場合に触れてみましょう。ここで紹介するのは、飼育歴50年の大ベテランが長年の研究、経験に基づいて確信に至ったものです。

 まずストレスについてですが、犬も人間と同様さまざまなストレスにさらされています。人間は、みずからの力である程度ストレスを和らげることができますが、犬は人間が対策を講じてあげない限り、ストレスから解放されるのはむずかしいといえます。ストレスの種類、原因も多岐にわたりますが、この中で最も心配される一つを挙げてみましょう。

 日中、秋田犬に接してやれる家人が誰もいない場合、犬は誰ともかかわることなく、ほとんど変化のない時間を延々過ごさなくてはなりません。共働き夫婦だけの世帯が、最たる例です。誰かが日中家にいて接してやれる環境ならばいいのですが、日中ほったらかしの状態ではストレスが蓄積し、「やがてそれが皮膚炎などの形で表れることがある」と前述の大ベテランオーナーは指摘します。

 そうした状況を少しでも紛らわすため、犬用の玩具を与えている方も多いですが、それさえ与えておけば"孤独"が癒される、などという単純なものではありません。ひとりで長時間いるということは、秋田犬にも少なからずストレスを強いていることになり、沈黙の悲鳴、としてアレルギー症状を誘発させてしまうことが少なくないというわけです。

 そうした状況下でしか秋田犬を飼育できない方々は、飼育すること自体が否定されてしまうことになりますが、実は孤独のストレスから解消してやるとても有効な方法があります。相棒を迎えることです。といってもゴールデンレトリバーや柴犬、チワワなど別犬種は論外で、秋田犬には秋田犬です。それは同性でも構いませんし、年齢差があっても問題はありません。つまり、同じ秋田犬が相棒としていつも一緒にいることがストレスの解消、予防にきわめて大きな役割を果たすのです。無論これは、ある程度資金的に余裕がないとできませんが、大切な家族の一員である秋田犬のストレスを解消し、少しでも長く一緒に暮らしたいと願う方々にはぜひお奨めしたい方法です。

 いかにすばらしい素質を持った秋田犬でも、飼育方法を誤ると駄犬、ことによっては怪物にしてしまいます。多くの皆さんが陥っている失敗が過保護と溺愛。前述のベテランオーナーさんのもとを旅立った子犬が、成長して久しぶりに里帰りした際、こともあろうにオーナーさんを威嚇するという例がありました。典型的な過保護からくる管理の失敗です。前オーナーさんにのことを忘れずにいる子は、再会した瞬間、我れを忘れて甘えるのが本来のあるべき形です。
 
 過保護、溺愛は自分がこの家の主、という間違った観念を持たせ、1度そうなった場合、軌道修正はかなりむずかしいのですが、一つ"特効薬"があります。先のストレス解消同様、相棒を迎えることです。過保護に育った犬は当初、相棒に対して焼きもちを焼いたりすることもありますが、しだいにその傾向は和らぎ、相棒とうまくつきあうようになります。

 相棒を迎えることで、規律への自覚を強めさせることも可能になります。また、我慢を覚えます。相棒の数が多いほど秋田犬がそこから学ぶ社会性は顕著なものがありますが、それは一般の秋田犬飼育者の現実に沿いませんので、相棒は1頭いれば十分でしょう。また、迎え入れたのが異性で、交配してメスが子を産んだ後、そのメスは母性本能の目覚めによって一気に"おとな"になり、性格がより穏やかになります。何度も出産させる必要はなく、最初の1度で効果を期待できます。

 中には10頭近い種々雑多な犬種の中に秋田犬を入れて、秋田犬をだめにしてしまった例もありますので、くれぐれも犬ならば何でも一緒がいい、という考え方は慎んだ方がいいでしょう。なお、ここで論じたことは秋田犬が特殊だということではなく、基本的にはどの犬種にもあてはまることです。秋田犬は、大型犬の中でも飼育しやすい部類に入り、子供の情操教育や成人、高齢者の健康維持にも大いに役立つというのが、当クラブや提携オーナーの皆さんの一致した考え方です。

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