ハチ公クラブヘの信頼。
それはハチ公の古里
秋田県大館市にあることです。
秋田犬発祥の地。
去勢・避妊ついての考え方

 当クラブを通じて全国へ旅立った子犬の管理や飼育方法などについて、新オーナーの皆さんからいろいろなご相談やご質問をちょうだいしますが、最近多い相談に去勢や避妊手術の有無が挙げられますので、このテーマで少し論じてみましょう。

 まず、「去勢」とは何か、ですが、国語辞典によりますと○動物の生殖腺(オスは睾丸、メスは卵巣)に切除、放射線照射などを施し、その機能を不能にすること○抵抗や反対の気力を失わせること。また、気持の張りを失わせ、勢いなどをそぐこと、などと記述されております。

 一方、野良犬や放し飼いなどで捕獲した犬を管理する秋田県動物管理センターは子犬の譲渡に関し、譲渡対象者の中に「避妊・去勢を実施できる方」という条件を付しています。同センターで(無償)譲渡する犬は、収容された子犬が対象となり、「可能な限り生存する機会を与えると共に、譲渡を実施することにより新しい飼い主及び県民に対し、飼い犬の適正飼養としつけの必要性を啓発することを目的としている」とのことです。ここでは、避妊・去勢が絶対的な条件とされています。

 当クラブ経由で迎え入れた秋田犬の子にそうした手術を施す必要があるかどうか、というご質問は意外に多く受けます。第1に考えなくてはならない点は、どちらがその犬にとって、また、オーナーご家族にとって幸福なのかということです。新オーナーさんからご相談を受けた際に、当クラブでは一貫して「最終的に決定なさるのは皆さんですが、去勢、避妊をなさらないことをお奨めします」と回答しています。

 飼育者の方々も犬種を問わず、去勢、避妊に対しては賛否両論が著しいようです。このコーナーではあくまで秋田犬についてのみ論じさせていただきますが、まずご家族の一員である秋田犬の生活環境をよくご覧になってみてください。飼育なさっている秋田犬は、無駄吠えをしたりするでしょうか。

 秋田犬は、基本的に無駄吠えがきわめて少ない犬種で、中でも当クラブから旅立っていった秋田犬は無駄吠えをしない血統を研究に研究を重ねて作り出していますので、新オーナー宅でも近所の住人、通行人などに理由もなく吠えることはしないと考えます。もちろん、その秋田犬が一定の者に対して「こいつは、どうも怪しいぞ」と判断した場合は別ですが。吠えるという行為は展覧会などでもとても印象を悪くしますので、無駄吠えをする犬は「気性がよくない」とベテランオーナーの皆さんも嫌います。
 

 次に、飼育なさっている秋田犬がメスで、周囲に放し飼いや野良犬がいる場合、どういう犬舎で飼育しているかといった環境の違いで妊娠のトラブルに見舞われる危険性があります。ホームセンターなどでよく見かける、犬の定番のような自由に野良犬などと接触できる犬小屋は秋田犬の場合、望ましくありません。屋外で飼育なさっている場合は、鉄格子タイプの犬舎を推奨します。

 鉄格子タイプは、散歩や用足しなどの時以外は外に出られないため、野良犬などと接触することもありません。ただ、1日のほとんどをそこで暮らすことになるわけですから、犬のストレス軽減のために少なくもタタミ1畳分など、ある程度ゆったりとしたスペースを確保してやることや周囲の景観を楽しめるようにする工夫も必要といえるでしょう。

 参考となる犬舎の写真を、左に掲載してみました。この場合は、生後30日程度の子犬の兄弟が入っておりますが、子犬は一緒でもまったく問題ありません。一方、室内犬として暮らしている場合は、基本的に散歩のとき以外は外に出ないと思われますので、オーナーの眼が届かない場所で別の犬と接触、というのは考えにくいかと思います。

 
 前述の「去勢、避妊をなさらないことをお奨めします」という当クラブの論拠ですが、特にオスの場合、去勢はオスであってオスでなくなることを意味します。やや汚い表現かも知れませんが、去勢とするということは「その犬を腑抜けにする」ということです。あるベテラン審査員はこういいます。「特にオスの場合、去勢をした犬としない犬とでは歴然としている。去勢されたオスは、オスとしての風格とたくましさが完全に失われている」と。日本犬の代表格ともいえる秋田犬を「腑抜け」にして、いいものでしょうか。メスの場合はさらに明確です。どれほど優れた血統の秋田犬でも、生涯、出産できなくなるわけですから。何らかの病気で人間の女性が出産できない体になってしまった場合、絶望の淵に突き落とされるほどの悲しみにさいなまれます。犬の場合、人間ほどの感情はないのかも知れませんが、避妊手術をされたメスは以前とは違う自分にいずれ気づくのではないでしょうか。

 メスを家族の一員にした新オーナーさんが「この子の将来を考えると、避妊した方がいいと思っているのですが、正直、迷っています。どうしたらいいものでしょうか」と相談なさいました。ベテランの前オーナーさんは「あれほどすばらしい血統のメスなのに、出産の機会を永久に奪ってしまうのですか」と、とても不快な思いに駆られました。避妊手術をするのだったら、手放さずに自分の手元に置いたのにと。ブリーダーの皆さんは、ハイレベルな犬を作り出していくことに情熱を注いでおりますので、去勢や避妊を施すということはほぼ皆無に近いと思われます。

 当クラブから旅立った秋田犬が野良犬化して不幸な境遇に置かれているというケースは皆無と確信していますが、犬の販売業者が破産した挙げ句、秋田犬を含む何頭もの犬を放置したまま行方をくらました、という"事件"は耳にしたことがあります。当クラブは今後も、オスはオスらしく、メスはメスらしく、そして秋田犬は捨てられることなく天然記念物としての誇りとともに愛されてほしいとの願いを込め、「去勢、避妊をなさらないことをお奨めします」という考えを貫きます。