子犬時の散歩

 秋田犬に限らず、愛犬との散歩を日課になさっている方は実に多いです。雪国では、吹雪の朝、夕方などはやや億劫なときもがありますが、それでも犬との散歩は健康維持につながりますし、当の愛犬たちにとっても飼い主との散歩は楽しみな習慣といえます。散歩の距離も、家の周辺程度から、朝夕各5キロ以上という方までおり、やる気や体力などに応じてさまざまです。

 そうした中、当クラブから秋田犬の子を迎え入れた方々のお便りやご相談で比較的多いのが、「子犬のうち散歩は差し控えてくださいと獣医さんに指示されたのですが、どうしたらいいでしょうか」というもの。実際、生後60日前後で当地を発つ子犬たちの多くは、旅立ちの前日まで元気に外を走り回っている場合が多く、いわば散歩をのびのびさせている子を旅立たせています。

 そうなると、獣医さんの助言に反した行為ということになりますが、ただ、獣医さんも「子犬のうちは、絶対に散歩させないでください」という厳密な方と「させても差し支えないですよ」という方がいるなど、考え方、認識には若干の開きがあるようです。そこで、このコーナーでは当地、秋田県大館市のベテラン秋田犬オーナーのアドバイスをご紹介しましょう。

 結論からしますと、子犬の時点で散歩をさせてもいいか否かの判断材料は、家の周囲の環境です。「その決め手になるのが、野良犬がいるかどうか」と前述のベテランオーナー。管理がしっかりしていれば、飼い犬の腹の中には回虫はいないと考えられますが、野良犬や放し飼いの犬は回虫を取り込んでいる可能性が俄然高くなります。

 腹の中に回虫がいる野良犬のフンには、回虫の卵が混じっていると考えた方が妥当でしょう。フンが雨風などで外見をなさなくなっても、卵は容易には死滅しません。それを子犬が口にしたり、舐めたりすると体内に取り込まれてしまい、卵が孵化します。体内に回虫がいる場合、ドッグフードなどせっかく摂取した栄養が回虫に吸収されてしまうため、子犬は栄養不良に陥ってしまいます。

 「豊富に餌を与えているのに、どうも太れなくて」という方を時おり見かけますが、前述の背景で、これはお腹に回虫がいる可能性が高いと考えた方がよさそうです。回虫の卵を体内に取り込んでしまうのは、子犬に限ったことではなく、成長した犬も同様で、豊富に餌を与えても体や顔つきにややげっそり感がありますので、比較的容易に判別できます。

 「回虫の卵を取り込んでしまったら、虫下しを投与すれば十分。万全を期したいなら、2カ月に1回のペースで投与すれば、腹の中に虫はいなくなる」と同ベテランオーナー。これで子犬も気兼ねなく散歩させることができます。獣医さんの中には「それだけではなくウイルスの問題もある」と指摘する方も少なくありませんが、よほど特殊な環境下にでも置かない限り、ウイルスで子犬が死ぬケースは、少なくとも当地では聞いたことがありません。

 では、子犬のうちから散歩をさせた秋田犬と散歩をさせない秋田犬は、成長してからどう違うのでしょうか。散歩をさせてもらっている犬は、早いうちから人や車などの物体に慣れます。それらの経験を踏んだ子犬は、人込みでも臆することなく堂々と闊歩しますが、そうでない犬は人がたくさんいる場所に足を踏み入れた途端、腰が抜けたような状態になり、1歩も進まなくなったという話も聞きます。同様に、走行する自動車などに早くから馴染ませておかないと、怯えたりする場合があります。つまりは、子犬のときからのびのび散歩させることで、社会性を養う効果が期待できるといえるでしょう。

 最後に、秋田犬の場合は延々何キロも散歩をさせる必要はなく、まして子犬はほんの家の周りで十分です。子犬を日課のようにめいっぱい走らせている方がおりますが、これは膝関節をだめにし、将来的に展覧会でも使いものにならなくなってしまいます。

 運動やトレーニングという観点から走らせたい場合は、少なくとも生後6カ月が過ぎてからの方が無難でしょう。走らせたらシェイプアップや筋力向上になる、と盲目的に解釈してしまうと大失敗をしてしまいます。そのような犬を展覧会でも、時おり見かけます。子犬のときは、目の届く位置でゆったりと遊ばせる程度の散歩を心がけてください。

 なお、ほかのページでもお断りしておりますが、このコーナーの内容は秋田犬について深く研究なさっているベテランからの取材に基づいた内容です。従って秋田犬に限定して論じており、他犬種は対応が異なる場合があります。内容はあくまでも秋田犬についてのみ、と解釈なさってください。

HOME